旅館でお客様のお世話をする仲居。食事や身の回りのお世話から客室の清掃、お出迎えやお見送りなどを主に行う女性の仕事です。
温かな接客の中にあるのは、日本ならではのおもてなしの心。お客様の心をほぐし、最高の滞在にするための細やかな気遣いが必要とされる仕事です。仲居になると、日々たくさんのお客様と出会えたり、正しい礼儀作法やマナーが身に付いたりとうれしいことも多々あります。仲居になるのに必要な資格などはありません。
旅館の仲居の仕事内容やメリット、辛いところを解説します。
旅館の仲居とは?
お客様に最高のくつろぎを提供するおもてなしのプロ、それが旅館の仲居です。
朝食の準備に始まり、お客様のお見送りやお出迎え、夕食の準備に後片付けまで、お客様の衣食住の準備や接客、そのほか身の回りのお困りごとなどを全面的にサポートする仕事です。
仲居というと着物のイメージが強いですが、旅館によっては動きやすさを重視した和装のユニフォームを取り入れているところもあります。あるいは清掃業務なども行う午前中は動きやすいユニフォーム、午後は和装というように時間帯で切り替えているところもあります。
基本的に私服での仕事ではないので着ていく服で悩むことはありません。
また、旅館は都市部や住宅街から離れた場所にあることも多いため、住み込みが多いのも特徴となっています。
旅館の仲居の業務の流れ
仲居の一日はお客様のお出迎えに始まり、食事や布団の準備、片付けに清掃と息つく暇もありません。そんな忙しさの中でもお客様の動向に常に気を配り、最善のおもてなしをするのがプロです。何組もを同時進行で接客することも多く、そのときの状況に合わせて臨機応変に動く応用力も求められます。
お出迎えとお見送り
仲居の大切な仕事の一つが、お客様のお出迎えとお見送りです。特にお客様到着時のお出迎えは、旅館の第一印象を左右する重要な役割。笑顔と気持ちのよいあいさつでお迎えしましょう。館内の説明をしながら客室までご案内し、客室ではお茶とお茶菓子でおもてなしします。旅の疲れへのねぎらいの言葉や簡単な自己紹介などでお客様の気持ちをほぐす接客ができるとよいでしょう。
そして、チェックアウト時のお見送りも仲居の仕事です。感謝の気持ちと旅の安全をお祈りして笑顔でお見送りします。また利用したいと思って頂けるような、温かな接客を心掛けましょう。
食事の配膳と後片付け
食事の配膳や後片付けも仲居の仕事です。旅館によってはレストランでの食事を行っている場合もありますが、ほとんどの旅館では部屋食が基本です。
料理長自慢の料理を客室まで運び、提供します。基本的には一品づつの提供になるので、お客様の食べるスピードやタイミング、頃合いなどを見計らいながらサービスを行う必要があります。
飲み物の注文なども同時に受けるため、どの部屋のお客様から何の注文を受けたかをしっかり覚えておかなければなりません。
料理を提供する順番や、食材、調理法などについてなど、お客様に聞かれた際に説明できるように事前に確認しておきましょう。
お客様の食事が終わったらその後の片付けも仲居が行います。
布団の準備と片付け
食事が終わると布団の準備です。特に大きな旅館になると一人で何組も受け持つため、布団の上げ下げは体力勝負な仕事と言えます。繁忙期になれば団体客も多く、布団の数もかなり増えます。それらを夕食から就寝までの短時間の間で行わなければならないため、夕食提供から片付け、布団の準備までは、特にテキパキとした効率のよい動きが求められます。
朝になったら朝食前あるいはお客様がレストランで朝食をされている間に布団の片付けをします。
お部屋の清掃
お客様のチェックアウト後は客室の清掃を行います。次に使うお客様が気持ちよく使えるよう隅々まで美しく掃除しましょう。
特に最近では口コミサイトやSNSで清掃が行き届いていない点を指摘されることも多くなっています。建物の古い新しいに関わらず、きちんと掃除された空間はやはり居心地がよいものです。
目が届きにくい部分の埃や手あかなども細かくチェックするようにしましょう。
またアメニティや飲み物など減っているものがあれば補充をします。
お客様のご要望への対応
上記にあげた内容以外にも、現場に入るとお客様から様々な要望をいただくことがあります。
バスやタクシーの手配、レストランの予約、夜食が食べたい、歩行の介助をしてほしいなどなど、そのときどきで要望の内容もさまざまです。そんな予定外の要望にどう応えるかが仲居の腕の見せ所。無理難題すべてに応える必要はありませんが、極力「いいえ」や「できません」という言葉を使わず、何かできることはないかと模索してこそ、おもてなしのプロと言えるでしょう。
一見無理な要望でも、機転を利かせた新たな提案が功を奏することもあります。
自分にしかできないおもてなしで、お客様に喜んでいただくのも仲居の仕事のやりがいの一つです。
旅館で仲居の仕事をするメリット
さまざまなお客様に出会える
仲居の仕事をしていると、普段の生活では出会えなかったであろう人との出会いがあります。世界中から訪れる外国人観光客や、ビジネスマン、遠方から訪れる家族などなど…日々たくさんの出会いがあるのがこの仕事の魅力の一つ。多くの出会いにより、さまざまな刺激を受けながら自分自身も成長できるはずです。さらにあなたにまた会いたくてと宿に訪れるリピーターのお客様もできるかもしれません。そんな再会もまたうれしいものです。
作法や立ち振舞いが洗練される
仲居の仕事に就くとまず着物を自分で着られるようになります。また、着物を着ることによって美しい所作や立振る舞いが身に付きます。もちろん礼儀作法や言葉遣いなどお客様に失礼のないような洗練された接客マナーも習得可能。
着物を着ていると、洋服と違って一つ一つの動きを丁寧に行うようになるものです。そんなゆっくりとした動作の中で、相手を思いやる気持ちやおもてなしの気持ちを持つ心のゆとりが自然と出てくるのです。
仲居の仕事で培った作法や立振る舞いは、プライベートでもおのずと出てきます。品のよい人、感じのよい人と、周囲から好印象をもたれるに違いありません。
時間管理がうまくなる
勤務時間中はバタバタとハードに過ごすことの多い仲居の仕事ですが、自分の時間をしっかりと確保できるというメリットもあります。
仲居の仕事の勤務時間は変形労働制が基本です。自分のシフトで出退勤をしたり、中抜けと言って途中で何時間もの休憩を挟む働き方もあります。ある程度勤続していれば自分の予定や希望に合わせた働き方もできてくるはず。
繁忙期と閑散期で差はありますが、特に閑散期であればまとまった時間が取れるので趣味や自分のやりたいことにも十分取り組めることが多いようです。自分の時間管理次第でオンオフをバランスよく充実させることができます。
旅館の仲居の辛いところ
クレームやお叱りも少なくない
同じおもてなしをしても、お客様によっては「余計なお世話だ」と言われたり、よかれと思ってしたことでお叱りを受けることも少なくありません。また無理難題を言いつけられることもあり、うまく対応しなければクレームに発展することもあります。
色々なお客様がいるということを念頭に、多少の叱責で落ち込みすぎないことも大切です。いざというときも慌てないように、クレーム対応などの接客スキルを高めておくようにしましょう。
常に笑顔で対応する切り替え力が必要
常に笑顔で接客しなければならないのが仲居の仕事です。
疲れていても、落ち込んでいてもお客様の前では笑顔を欠かさずにいなければなりません。どんな状況でも笑顔を常にキープできるようになれば一人前の仲居になれたと思ってよいでしょう。
旅館で働いていると、お客様からお叱りを受けたり、失敗したりということもあります。そういった落ち込んだ場合でも、すぐに気持ちを切り替えて笑顔になれる、ポジティブ思考を持ち合わせていることも大切です。
体力勝負!体を動かすことの多く仕事
仲居の仕事は結構ハードです。一日中立ちっぱなしな上、常に動き回っていなければなりません。さらに配膳や布団の上げ下げなど、重たいものを持つ仕事も少なくないでしょう。慣れないうちは一日が終わるとクタクタで全身筋肉痛になるという声もよく聞かれます。
ただし、将来の健康維持という観点では、座りっぱなしの仕事に比べると体にはよいはず。しばらく続けるうちに体も慣れてくるでしょう。責任をもって仕事をやり遂げるためにも、常日頃から健康管理をしっかりしておくことが大切です。
旅館の仲居の仕事は未経験から始める人も多い
旅館の仲居になるために必要な資格などは特になく、未経験での転職がしやすい職種です。接客経験や語学が堪能な人は転職に有利と言えます。求人情報サイトやハローワークなどで情報をチェックしたり、働きたい旅館がある場合は直接問い合わせてみましょう。アルバイトの採用も多いので学生のうちに経験してみるのもおすすめです。
多くの旅館では研修制度がしっかりしていて、未経験で入っても一からしっかり仕事を教えてもらえます。周辺観光知識や着付けの技術を習得したり、また、現場研修を積みながら一人前の仲居を目指します。
最初は一人で一組のお客様を担当しますが、慣れてくると二組、三組と一度に担当する組数が増えていきます。馴染みのお客様ができたり、指名してもらえるようになると、仕事に対してのやりがいもより強く感じられるでしょう。
まとめ
旅館の仲居の仕事は思った以上にハードな面もあります。ただし、お客様の身の回りのお世話をする喜びも感じられる仕事。
お客様から直接感謝を伝えられることも多く、やりがいも感じられるでしょう。
礼儀作法や接客技術の向上にも大変役立ちます。未経験でも転職しやすく、特に接客経験がある人であれば始めやすい仕事と言えるでしょう。