豪華な外観に、清潔感のある内装。
目を奪われる料理に、洗練された接客。
常にポジティブなイメージを連想させるホテル業界で働いてみたい、と思った経験のある人は、たくさんいるのではないでしょうか。
「ホテル業界」と聞くと、ホテルの顔と言われるフロント業務や、普段はなかなか目にすることのない豪華な料理を作るシェフなど、華々しい職種の仕事を思い浮かべるかもしれません。
しかし、一言に「ホテル業界」と言っても、フロントやシェフだけでなく、本当にさまざまな仕事があるのです。
ホテルを利用したことが一度もない人はほとんどいないと思いますが、一度や二度利用したからといって、どれぐらいの人が、どこで、どのような仕事を担っているのかは分かりませんよね。
この記事では、ホテル業界への転職を考えている方向けに、「ホテル業界には、どんな職種があり、どんな仕事をしているのか?」についてをまとめました!
ホテルも一つの会社!職種の種類は豊富
まずホテル業界は、さまざまな職種をもとに、「部門」が分かれています。
主なものを挙げると、「宿泊」「管理」「営業」「飲食・レストラン」「ブライダル」、これら5部門は多くのホテルに設けられている主要部門です。
ホテルというのは、これらの各部門が連携して、「お客様に最高のおもてなしをするための一つの企業」です。
そしてそれぞれの部門が、さらに細かい職種で構成されています。
例えば「宿泊部門」には、「フロントスタッフ」「コンシェルジュ」「ハウスキーピング」「ベルボーイ」などの職種があります。
同じように、他の部門もさまざまな職種で分かれています。
そのため、「ホテル業界に転職したいけど、やっぱり未経験は減点材料かな…」などと悩む必要はありません。
ホテルは、想像以上に多くの職種で構成されています。
ホテル業界には、たくさんの職種があり、またどのような仕事で構成されているのかを知れば、自分に合う、自分がやりたい仕事が必ず、見つかるのではないかと思います。
以下で、各部門ごとに、どのような職種があるのかを、詳しく見ていきましょう。
宿泊部門
まず、ホテルがホテルである第一の理由であり、一番の主力商品でもある「宿泊部門」の職種を見ていきましょう。
「ホテル業界」と言われると、一番に思い浮かべる仕事であり、利用者にとって最も馴染みのある仕事が、宿泊部門を構成している仕事です。
フロントスタッフ
「ホテル業界」と聞くと、真っ先に思い浮かべるのが、この「フロントスタッフ」なのではないでしょうか。
フロントスタッフは、ホテルの顔とも言われ、時にホテル全体のイメージをも左右する重要な仕事です。
また、宿泊部門において、このフロントスタッフの指示により、他の部署も動くため、名実ともにホテルの中心と言えるでしょう。
主な業務内容としては、チェックイン・チェックアウト及びホテル全体の案内などの宿泊客対応。他にも郵便物・国際電話などの対応も含まれます。
また、予約の受付や変更・問い合わせなどの電話応対、チェックアウト時及び外貨両替の精算業務などがあります。
コンシェルジュ
今では、すっかり聞き慣れたホテル用語で、ホテルだけでなく病院やショッピングセンターにも、この役職が設けられている場合もあります。
コンシェルジュは、いわゆる「なんでも屋」です。
ホテルに宿泊するお客様の要望には、何でもお応えする究極のイエスマン。
ホテルフロントもお客様に対して「NO」と言えないことが多いですが、もしかするとコンシェルジュは、それ以上かもしれません。
コンシェルジュの業務内容は、「とにかくお客様の要望を聞き、それに応えること」
主には、ホテル周辺の観光スポットの案内から、レストラン・バーなどの飲食店の案内や予約、航空券の手配、劇場や映画館などの座席予約まで承る場合もあります。
コンシェルジュには幅広い知識や、あらゆるものに対応する適応力が必要です。
他の仕事と決定的に異なることは、「決まった仕事だけをやっていればいいわけではない」ということ。
コンシェルジュという仕事には、ゴールがない分、とてもやりがいがある仕事だと言えるでしょう。
ハウスキーピング
この仕事も、利用者にとってとても馴染みのある仕事の一つかもしれません。
ハウスキーピングの業務は、客室の清掃及び管理です。
客室清掃は、基本的に利用者が部屋にいない間に行われるので、ホテルフロントやコンシェルジュと違い、直接接することは少ないかもしれません。
しかし宿泊業は、その名の通り「宿泊場所を提供する」仕事です。
ハウスキーピングの主な仕事場である客室は、その宿泊場所に他ならないので、ホテルの最大の商品ということになります。
その最大の商品の管理を任されているのが、ハウスキーピングという仕事ですので、宿泊業において生命線であると言っても、決して過言ではないでしょう。
ベッドに髪の毛が残っている、浴槽が汚れているなど、もし自分が利用者だとしたら不快に感じることが一つも許されない、ミス一つ許されない、という意味では、とてもシビアで責任のある仕事だと言えます。
ベルボーイ
ベルボーイ(女性の場合はベルガール)は、受付でチェックインが済んだお客様の手荷物を運び、客室までご案内する業務を主に担当します。
逆にチェックアウト時には、お客様を受付までご案内することもあります。
新人研修の場として、この職を任されることも多くありますが、それはベルボーイが最も簡単な仕事だからではなく、ホテルという職場を理解するのに最も適しているからです。
フロントやロビーというのは、ホテル内において最も混雑している場所です。
そのフロントとロビーを一目で見渡せる位置に配置されているのが、ベルボーイ。
ただ単純に、お客様の荷物を持ち客室まで案内するのではなく、ロビーにいるお客様の表情を観察し、いまお客様が何を求めているのか、何をして欲しいのかを瞬時に察知し、たとえ直接言われていなくても、お客様の要望に応える。
それが、ベルボーイが担う業務です。
そしてその「お客様が求めていること」を察知する能力は、サービス業である宿泊業において、とても大切なことであり、それを学び、経験できるのがベルボーイという仕事なのです。
ドアマン
ドアマンは、その名の通りお客様が到着した際にドアを開け、ホテル内に案内する仕事です。
この業務内容だけを聞くと、とてもシンプルに聞こえますが、ドアマンという仕事は見た目ほど簡単な仕事ではありません。
ホテルの第一印象は、ドアマンで決まるとさえ言われるほどの重要な仕事なのです。
主に「ホテルの顔」と言われるのは、フロントスタッフですが、実際に一番最初にお客様と接するのはドアマンです。
例えば、このドアマンをアルバイトに任せ、ホテルに入った時に、やる気のない顔と、感情のこもっていない声で「いらっしゃいませ」と迎えられたら、お客様はどう感じるでしょうか。
決して快く思わないだけでなく、重要なホテルの第一印象も良くないものとなってしまいます。
「きっちりとした身なりのドアマンが、笑顔で覇気のある声で迎えてくれる」ホテルとは、雲泥の差ですよね。
そしてドアマンの業務は、ドアを開けお客様を迎えるだけでなく、タクシーやハイヤーの手配、車の誘導、周辺の警備など少なくありません。
またドアマンは、「お客様の情報が、頭に多く入っていれば入っているほど有能」と言われますので、常連のお客様の顔や名前・職業、車のナンバーや車種を覚えておかなければいけません。
決して、楽な仕事でもありませんね。
管理部門
次に「管理部門」の職種です。
ホテルも一つの会社だと言いましたが、他のさまざまな会社と同じように、ホテルにも管理や営業を担う専門の部署があるのです。
直接お客様に接することは少ないバックオフィス業務ですが、一企業として必須の裏舞台です。
管理部門は、ホテル全体を見て、設備や人材、そして資金をどのように運営していくのかを管理しています。
総務
総務の業務内容は、多岐に渡ります。
デスクや椅子・電話などの会社で使用されている、あらゆる必要備品の発注や管理、取引先への中元や歳暮の手配、清掃業者の手配や照明・空調などの設備管理、帳簿や印鑑簿などの書類管理、取引先やお客様に慶弔事があった際の冠婚葬祭への対応や社外からの問い合わせなどです。
どの企業にも、総務部があるのは、どの企業にも必要であるから。
表舞台に立つことは少ないですが、まさに黒子役に徹しながらも、なくてはならない裏方仕事。
それが総務という仕事です。
あらゆる従業員が、それぞれの持ち場で、力を発揮しやすいようにサポートをする。
幅広いことを職域としているので、さまざまなことが経験できるのも、総務という仕事の魅力です。
経理
経理の主な仕事は、売上管理はもちろん、日々の現金の出納(支払いや受け取り)、伝票の管理、
クレジット会計の処理など、会計業務全般を担当します。
帳簿の管理や労務、従業員の保険関係の業務も兼ねていることから、経理の仕事は、総務の仕事と切り離せない部分があります。
そのため、総務部の中に総務課と経理課を置くなど、総務と密に連絡を取り合いながら業務が行えるようになっていることが、ホテル業界では一般化しています。
現代は、クレジットカードやQRコード決済などキャッシュレス化が進んでおり、ホテルの会計処理は複雑化しています。
そのような状況の中でも、会計業務や売上管理は、正確に行わなければ、ホテルだけでなく、会社全体の信用問題にも発展してしまいます。
そのため、専門的な知識と正確性が求められるとともに、大きな責任が伴う仕事でもあります。
しかし、その大きな責任があるために、やりがいも一際大きな仕事だと言えるでしょう。
人事
人事の主な業務内容は、ホテルに関わる人材の採用や育成及び評価です。
また、配置転換や異動・退職など、人事にかかわる全てを担当します。
宿泊業は、ホスピタリティ産業です。
そしてホスピタリティとは、思いやりや心のこもったおもてなし、という意味です。
立派な建物や清潔な客室でサービスは提供できますが、思いやりや心をこめることは「人間」でないとできません。
ホスピタリティにおいて、生命線とも言える、その人間、すなわち人材の全てを担当するのが人事という部署です。
人材がホスピタリティ産業における生命線と言えるならば、人事こそがホテルの命を握っていると言えるでしょう。
ホテルが営業を続けていくために重要なこと。
そこに直接的に関わっているのが、人事という職種なのです。
設備管理
設備管理は、建物全体のメンテナンスが主な業務です。
空調・水道・ガス・電気・駐車場・エレベーターなどの点検及び管理、また防災・防犯を主とした、ホテル全体の保安も担当します。
空調や水道などのホテル設備は、ホテルの大事な商品です。
建物は使っていれば古びていくものだし、それは電気系統や空調・ガス設備についても同じです。
歴史あるホテルほど、目に見えない部分で必ずメンテナンスが必要になってきます。
また、万が一火災などが発生した際に、防災が機能しなければ、確実に重大な問題に発展します。
災害は起きないことが一番ですが、だからと言って起きないことを前提にすることはできません。
ホテルという多くの方の命を預かる会社だからこそ、災害が発生した場合に備えておくことは必要不可欠です。
ホテルの商品とお客様の命を守る、それが設備管理の仕事です。
経営企画
いくら素晴らしい人材を擁し、ホテルを清潔に保って、サービス面を万全にしても、ホテル自体の存在を知ってもらえなければ、お客様が来ることはありません。
経営企画は、ホテルをいかに売り込み、認知度を上げ、お客様に足を運んでもらうかを考える仕事です。
主な業務内容としては、ホテル内で行うイベントの企画、テレビや雑誌などのメディア対応、旅行会社と連携しての宿泊プランの企画、ホームページの管理などです。
ホテルは、宿泊場所の提供を通して、お客様に満足して頂くことを使命としていますが、それは「お客様がいること」を前提としています。
お客様が来なければ、お客様を満足させることなど当然できません。
周辺の観光施設と連携し、地域特化型のイベントを企画したり、テーマパークと連携して、ツアーを組むなど、お客様が来たいと思える企画を立案・実行し、ホテルに足を運んでいただく。
お客様に満足して頂くために、「まずお客様に来て頂くこと」を目指す。
それが経営企画の仕事です。
営業やマーケティング部門
次に、「営業」及び「マーケティング」部門を見ていきましょう。
宿泊部門と管理部門が、ホテル内での仕事を基本としているのに対し、営業やマーケティング部門はホテル外での仕事が多くなります。
そのため、こちらの部門は、管理部門以上にお客様との直接的な接点は少ないです。
しかし近年は、Webマーケティングを活用した顧客獲得の重要度が高まってきています。
ですので、これらの部門には、市場リサーチ力や情報収集力が不可欠となります。
営業
営業部門の主な業務は、「大型顧客の獲得」です。
ホテルは、お客様への宿泊場所の提供を主なサービスとしていますが、もちろんそれだけではありません。
結婚式場や宴会場の提供、ホテル併設のレストランの利用など、宿泊以外のサービスも提供しています。
営業部門は、宿泊はもちろん、宿泊以外のサービスもパッケージにして、大型顧客の獲得を狙います。
例えば、企業の社員旅行誘致、会議やセミナー・株主総会の開催契約、旅行会社と連携したグループツアーの獲得、結婚披露宴を主としたパーティー開催などです。
管理部門の「経営企画」部署と似ていますが、違いとしては、経営企画が主に個人客をターゲットとしているのに対して、営業は団体客をターゲットとしています。
例えば、帝国ホテルで見てみると、宿泊部門の売上は全体の20%で、宴会部門とレストラン部門を合わせると、半分以上の55%を占めているという売上構成が出ています。(※1)
もちろん他のホテルも同様とまでは言いませんが、ホテルにとって宴会やレストラン部門が、どれだけ重要な商品であるかは理解できるでしょう。
客室・宴会場・併設レストランと、ホテルが提供する全てのサービスを団体や企業に売り込み、大型顧客の獲得を通して、利益拡大に貢献する。
それが、営業部門の仕事です。
※1 参考「帝国ホテルHP;数字で見る帝国ホテル」https://www.imperialhotel.co.jp/j/recruit/about/number.html
マーケティング
マーケティングの仕事は、どの企業においても、「自社商品が売れるための仕組みづくり」です。
ホテルでは、ホテルの商品である、客室、結婚式場及び宴会場、レストランの売上を伸ばすための販売戦略の策定が主な業務内容となります。
顧客情報やアンケートなどから、どのようなお客様がホテルを利用するか顧客分析を行い、それを基に、どこにどのようなアプローチをして、どのようなイベントを組めば、売上増加につながるのかを考え、営業部門と連携しながら、イベントの企画・実行をサポートします。
少しでもたくさんのお客様に来て頂ける仕掛けを考案し、そして来て頂いたお客様が満足できる空間をつくる。
それが、マーケティング部門の仕事です。
飲食・レストラン部門
ホテルに宿泊するとき、客室の次に楽しみなものといえば料理が思い浮かぶのではないでしょうか。
お客様によっては、ホテル内のレストラン目当てに来る方もいるほど重要な「飲食・レストラン」部門を見ていきましょう。
ホテルを利用し、外部から見ているだけだと、キッチンとホールぐらいの区別しかつかないですが、ホテル内のレストランにはさまざまな職種があります。
そして、宿泊と合わせてレストランを利用されるお客様も多くいますし、営業が企画したイベントで利用されるお客様もいます。
また、結婚披露宴でレストランを利用される方もいます。
そのため、この「飲食・レストラン部門」は、宿泊・営業・ブライダル部門との連携が欠かせない部門です。
レストランスタッフ
一言にレストランスタッフと言っても、ホテルにはたくさんの職種があります。
まずメニューの説明をしたり、料理の提供をする、最も馴染みのある職種であるウェイター(ウェイトレス)。
次に、下げ物やテーブルのセッティングを担うバスボーイ。
食器の調達や洗い物を担当するスチュワード。
レストランの入り口に立ち、お客様を席まで案内するレシェプショニスト。
レストラン内でのお客様対応を取り仕切るキャプテン。
レストランの店舗運営を任されるレストランマネージャー。
そして、レストラン部門の全てを取りしきる総料理長。
もちろん全てのホテルで同じわけではないですが、ホテルのレストランスタッフはこれだけ細かく職域と呼び名が分かれています。
バトラーやソムリエ
バトラーは主に客室内での「なんでも屋」として、お客様の要望に応える仕事なので、宿泊部門とのつながりが強いですが、ルームサービスの提供を担当することが多いので、レストラン部門に配置されることもあります。
ルームサービスの客室への運搬はもちろん、アイロンがけやお土産の郵送など、お客様から要望があれば、何にでも応える。
それがバトラーです。
次にソムリエですが、こちらは今ではすっかりメジャーな職種となった、ワインに関するエキスパートです。
主にワインの仕入れや選別・提供を行います。
料理を強みとしているホテルには、ソムリエは必要不可欠な存在です。
どの料理にどのワインが合うのかという知識だけでなく、常連のお客様であれば、その方の好みも考慮した上で、ワインを選定しなければなりません。
メニューも季節によって変わるので、レストランのメニューが変わるたびに、ワインも選び直さなければならないですし、あらゆる料理に最高に合うワインを、数多くのお客様に提供するという意味で、ワインだけでなく料理や接客にも精通していなければ務まらない、とても難易度の高く、だからこそやりがいのある仕事だと言えるでしょう。
ホテルでソムリエとして働きたいなら、ソムリエ資格の取得は必須です。
また、ソムリエの資格試験を受けるためには、飲食業での経験が必要になります。
シェフ
シェフは一般的には、料理を担当している料理人のことを指しますが、ホテルでのシェフという職種は、料理部門のトップを意味します。
シェフは、厨房内でのリーダーなので、厨房全体の管理はもちろんのこと、料理自体も自ら行います。
シェフは、ただ料理ができるだけでは務まりません。
厨房のリーダーであるからには、数多くの料理人をまとめるマネジメント能力も必要ですし、メニューの考案にも責任を持つので、予算や原価計算にも精通していなければなりません。
ホテルの味はシェフによって決まるというのは、全くオーバーな表現ではなく、それほどまでにホテルでのシェフという仕事は責任重大なのです。
ちなみにホテルでは、厨房のリーダーであるシェフの他に、スープやグリルなどの温製料理を担当するホットセクション、サラダなどの冷製料理担当のコールドセクション、肉や魚の下処理を行うブッチャー、ホテル自家製のパンを製造するベーカリーなどの職種があります。
ホテルにおいて、シェフなどの料理人として働きたい場合には、調理師免許の取得を必須としているホテルもありますが、全てのホテルで資格が必須というわけではありません。
パティシエ
パティシエ(英語ではペストリー)も、今ではとても有名な職業となりましたが、洋菓子を主としたデザート類のスペシャリストです。
このパティシエも、ホテルにとって必須の職種であり、そのため今では、専属のパティシエを雇っているホテルがほとんどです。
なぜこれほどまでにパティシエが重要かというと、それは多くのホテルにはブライダル部門があるからです。
結婚披露宴には必ずデザートがつきますし、何よりウェディングケーキの製造・提供も、パティシエのとても重要な仕事です。
ホテルウェディングが一般化し、ホテルがブライダル部門を設ける現代だからこそ、パティシエという職業がホテルにとって、なくてはならないものになっているのです。
ちなみにパティシエも、専門的な職業であるので、ホテルによっては調理師免許が必要な場合もあります。
また、免許は必要なくとも、実務経験を応募の条件としているホテルが多いです。
ブライダル部門
華やかなイメージのあるホテル業界の中でも、一段と華やかさが際立つ「ブライダル」部門。
結婚式場を有しているホテルが多くなってきた今、ホテル内にブライダル部門を設け、積極的に売り出していくことがトレンドとなってきています。
こちらも、他部門との連携が重要で、また企画・提案・説明の場面が多く、逆算でモノゴトを考えられる段取り力が求められます。
ブライダル部門にも、さまざまな職種があり、それら全てが連携して、ブライダル部門を有機的に機能させています。
ウェディングプランナー
ブライダルの仕事というと、真っ先にこれを思い浮かべたり、少なくとも聞いたことのある人がほとんどなのではないでしょうか。
ウェディングプランナーは、結婚式のプランニング(企画・立案)をし、結婚式を挙げるカップルのコンサルタント的な仕事を担います。
結婚式は、式を行うカップルにとって、「人生に一度きり」であり、「人生最大」の晴れ舞台です。
お客様の希望や予算を細かく聞きながら、要望に沿うように、細かく計画を立てていき、「人生最大の晴れ舞台」が、「人生最高の思い出」となるようにサポートをする。
お客様にとって最大の非日常に、日常的に、しかも濃密に接することができる、魅力あふれた仕事と言えるでしょう。
テーブルコーディネーター
結婚式となれば、新郎・新婦及びゲストの方が使用するテーブル一つとっても式の雰囲気を左右する重要な要素の一つとなります。
テーブルクロスの選定から、お皿やスプーン・フォークなどの食器やナプキンの組み合わせ、料理だけでなく式全体との調和を考え、テーブル全体のデザインを取り仕切るのが、テーブルコーディネーターです。
テーブルコーディネーターの職域は、テーブルの上だけと一見限られているように思えますが、それが式全体のムードにも影響を及ぼすからこそ、この仕事が存在しています。
そして、お客様のイメージや要望をヒアリングし、それを実現させるのもテーブルコーディネーターの仕事。
全体を調和させた上で、いかにお客様の個性を活かすかが、この仕事の最大の腕の見せ所です。
介添人
結婚式当日に、新郎・新婦に付き添い、身の回りのお世話係りをするのが、介添人です。
新郎・新婦にとって結婚式というのは、今までに経験したことのない大舞台になります。
大勢の人の前で歩いたり、スピーチをしたりする中で、主賓や上司に気を遣わなければなりません。
そんな中、ウェディングドレスなど慣れない服装で歩き、式中のマナーにも気を配り、スケジュール通りに段取りをこなしていくのは、簡単なことではありません。
そんな新郎・新婦のサポートをするのが、介添人です。
一生に一度の晴れ舞台である結婚式は、逆に言えば、重大なリスクも含んでいます。
何か不手際があったり、大きなミスをしてしまったら、せっかくの式が台無しになるだけでなく、一生嫌な記憶として残ることになってしまいます。
それを防ぐのが介添人の仕事であり、介添人がなくてはならない理由でもあるのです。
新郎・新婦への気配りを常に怠らず、式が円滑に進行するために不可欠な存在であるからこそ、介添人は、重大な責任と大きなやりがいがある仕事だと言えるでしょう。
衣装コーディネーター
華やかなウェディングドレスを身に纏い、バージンロードを歩く。
これは女性としての大きな夢ですよね。
男性も、秀逸に仕立てられたタキシードを着こなし、花嫁をリードする。
結婚式において、衣装が重要であることに異論はないでしょう。
その衣装に関することを総合的に取りまとめるのが、衣装コーディネーターという仕事です。
ウェディングドレスやタキシードは、結婚式で着用される代表的な衣装の例としてあげましたが、主なウェディングドレスだけでも6種類、他にお客様が和装を希望される場合も当然あります。
さらに衣装コーディネーターの業務は、服装の選択だけではなく、アクセサリーの選定やヘアメイク・ブーケの決定、お色直しも含めた服装に関連するプランニングも含みます。
他の職種と同様に、衣装コーディネーターも、お客様の希望や意見・予算をヒアリングしますが、結婚式という場に相応しい服装でなければなりません。
お客様の要望と、儀式に適した服装との調整をし、衣装と結婚式全体の雰囲気を調和させることは、衣装コーディネーターの難しさであり、力の見せ所です。
フラワーコーディネーター
結婚式が華やかと言われる理由は、花を置いていない結婚式をあまり見たことがないように、文字どおり結婚式が、花と密接なつながりを持っているからではないでしょうか。
ロビーや入り口、会場内に飾られる花はもちろん、ウェルカムボードや新婦が持つブーケなど、式で使用する花全てをアレンジするのが、フラワーコーディネーターです。
テーブルコーディネーターと連携し、テーブル上の花もフラワーコーディネーターが整えます。
和風であれ、洋風であれ、結婚式に花は欠かせないもの。
ただ花をアレンジするだけでなく、お客様の希望を聞き、色合いや大きさ、そして花言葉も考慮に入れた上で、全体を調和させる。
それが、フラワーコーディネーターという仕事です。
ホテル業界で活かせるスキルや能力
ホテル業界にある、さまざまな職種をもとに構成されている主な5つの部門を見てきました。
「飲食・レストラン」や「ブライダル」部門には、資格や経験がなければ、なかなか採用されない職種もありますが、全体で見れば、そのような職種はわずかだと言えるでしょう。
たとえ、特別な資格を持っていなくても、そして特定の業界に従事した経験がなくても、ホテル業界で働ける可能性は十分にあります。
ここまで見てきたように、ホテルには幅広い、さまざま仕事があります。
たとえ未経験でも、あなたの持っている能力が活用できる仕事が、ホテル業界には必ずあります。
自分が持っている能力と、それを活かせる職種をつなげ、自分に合った仕事を見つけていきましょう。
英会話
英語力は、ホテル業界での就職活動において、間違いなく強みになります。
それは、昨今訪日する外国人観光客が増加しており、それに伴い、ホテルにとって英語が堪能な従業員の確保が急務となっているからです。
英会話ができるなら、主にフロントやコンシェルジュなど、お客様に直接接することの多い宿泊部門において、その能力を活かすことができます。
ホテルで用いる英会話は、日常会話では使わない英単語・専門用語なども使いますが、それは働いてから身につけていけば問題ありません。
たとえホテルの専門学校や宿泊業及び接客業の経験がなくても、大丈夫。
ホテル側にとって魅力ある人材となるため、間違いなく強みになります。
また、英語だけでなく、中国語や韓国語なども、有利になる場合が多くあります。
コミュニケーション能力
ホテルは、さまざまな職種があり、その職種及び部門が連携を取り合って、ホテルというサービスを成立させています。
その意味で、コミュニケーション能力は、ホテル業にとって極めて重要なスキルと言えます。
直接お客様と接する宿泊部門はもちろん、比較的お客様との接点は少ない管理部門でさえ、総務と会計は密に連絡を取り合わなければ成り立たないなど、コミュニケーション能力がなければ、あらゆる業務に支障をきたします。
さらに部門内だけでなく、結婚式と同時に宿泊されるお客様がいる場合のブライダル部門と宿泊部門、取引先企業との宴会及びパーティー契約を結ぶ際の営業・マーケティング部門とレストラン部門など、部門ごとの連携もホテル業にとっては欠かせません。
このようにホテル業では、業務を円滑に遂行する上で、職種・部門ごとの連携の重要性が大きいため、たとえ未経験者でも、コミュニケーション能力がある人材が重宝されるのです。
観察力
接客業であるホテルマンにとって、観察力は大きな武器になります。
お客様の表情や仕草を観察し、「お客様が今何を求めているのか?」を見抜き、瞬時に手助けをする。
言われたから行動するのではなく、言われる前に行動する。
そんな接客ができるようになれば、お客様のホテルに対する満足度が、大幅に上がることは間違いないでしょう。
そして観察力が武器になるのは、接客だけではありません。
例えば、お客様に接することが少ない管理部門に配属されたとしても、ホテルにとって有益な人材を発掘する人事部では人間観察力が、保安を担当する設備管理部ではガスや電気設備などの不調にいち早く気づく観察力が求められます。
レストラン部門においても、いま自分が何をすれば、現場が円滑に回るのかを判断する状況観察力など、観察力が役立つ場面は挙げればキリがありません。
ホテルの内情を知れば知るほど、観察力は、どの部門・職種にとっても有用な力です。
チームワークが取れる
お客様の側からホテルを見てみると、フロントにいる宿泊部門のスタッフであろうと、結婚式場にいるブライダル部門のスタッフであろうと、レストランで働いている飲食・レストラン部門のスタッフであろうと、全員が同じ「ホテルのスタッフ」です。
どこかで満足度が高かったとしても、どこかで満足度が低ければ、ホテル全体に対する印象は良くないものとなってしまいます。
ホテル業は、さまざまな職種と部門がつながり、有機的に機能して初めて、お客様に満足して頂けるサービスの提供が成り立ちます。
そのため、自分一人だけが最高の仕事をしていてもダメなのです。
どの部門であろうと、どの職種であろうと関係なく、スタッフ全員でホテルスタッフであるという意識を持ち、チームワークが取れる人材でなければ、ホテル業の仕事は務まりません。
だからこそ、ホテル側は資格や経験よりも、連帯や協力体制が取れるかなどの「人間性」を重視して採用活動を行うのです。
あなたが、個人主義に陥らず、全体を見て考え、行動できる、チームワークが取れる人材であるなら、ホテル業界での就職活動に有利に働くことでしょう。
情報収集力
ドアマンが呼び出すタクシーが、お客様がいつも利用しているタクシー会社である。
ベルボーイが、お客様の持ち物から好みを見出し、ちょっとした会話で楽しませる。
このようなサービスができるスタッフがいたら、粋なサービスをするホテルだなと感じませんか?
それは情報収集力があってこそ、なせる技です。
上述の例でいえば、ドアマンは常連のお客様が乗ってきた車から、タクシー会社を調べ、お客様によって呼び出すタクシーを変えているのでしょう。
ベルボーイは、お客様が持っているカバンを見て、それについての情報を調べたのかもしれません。
このように、情報収集力はホテル業界で十分に活かせるスキルの一つです。
宿泊部門でなくても、ホテルを利用している人の傾向を分析し、需要を見つけ出し、しかるべき企業や団体にホテルの利用を提案するマーケティング部門など、情報収集力が活かされる部門は他にもあります。
このように、さまざまなスキルや能力が活かせる、幅広い職種があるのがホテル業界なのです。
ホテル業界未経験なら強みで職種を選ぼう
もしあなたに、宿泊業や接客業の経験がなかったとしても、ホテル業界には採用される確率の高い職種は豊富にあります。
しかし未経験だからと言って、「なんでもやります!」と、どの職種でもいいから、とりあえず応募しておこうという考えはNGです。
実際、シェフなど専門的な職種を除いて、どの部門に配属されるかは採用されてから決められることも多いです。
しかしだからといって、見境なしにエントリーしていい理由にはなりません。
自分の強みを見つけ出し、分析し、自分の能力を活かせる職種を選びましょう。
また、これまで述べてきたように、職種ごとに求められるスキルは異なりますし、宿泊業の仕事にゴールはありません。
常に自分の能力を磨いていき、その時の自分の最大限を尽くすことが大切です。
ホテル業界で働くことは、採用後にしかできませんが、スキルアップは今からでも始められます。
採用後に努力するという決意よりも、今すでに始めている努力のほうが説得力は増しますよね。
言われたから言われたことをするという、受け身の取り組みではなく、能動的に自分のスキルアップをしていくことが重要であり、その姿勢は強力なアピールにもなるでしょう。